2018/02/22

今週のトレーダージョーズさん:困ったときの冷凍ごはん


先月末からちょっと冗談じゃないくらい忙しかったので、息子に「トレジョで冷凍食品を買ってくるように。もしくはがっつりとご飯を作ってくれても可」というオーダーを出しました。そしたら冷凍ライスがやってきた。

「カリフラワーステアフライ」というのは新しい。
ごはんの代わりにカリフラワーをポロポロにバラしたやつをなんちゃってフライドライス風にしたもの。


これが食感がポクポクしておもしろくて、けっこうおいしゅうございました。これはリピートありです!

そして右側のジャパニーズスタイル・フライドライスは、うちのヘビーローテーション。

トレジョの冷凍食品といえばこれというくらい大活躍。
だって枝豆もひじきもはいってるし、冷凍ご飯なのにいいことした気分になりますよ。
とてもアメリカンスーパーの製品とはおもえない出来。


焼き海苔をつけたら変な絵になっちゃった。
左はゴールデンビーツ&山羊チーズ。

息子がもう放置可能な年でよかった。家でフリーランスの仕事しててワンオペで小さい子どものいる人はほんと尊敬する。わたしのようなずさんな性格では、子どもが学齢期だったら絶対無理だったと思う。いろいろホイホイと抱え込みすぎなのでもあるけど。



にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/21

ラマーちゃん


今学期は美術史と大気科学の授業をとってます。

美術史はけっこうヘビーです。お題は
Art/ Identity Politics: Issues of Representations in Contemporary Art
という。自分の取っているクラスの名前なのに長すぎて覚えきれていない。いま、これをタイプするのに3回見直した。スペル間違ってるかも。だめすぎる。

60年代以降のIdentity Politicとコンテンポラリーアートの関係をカバーしていて、フェミニズム、ブラックアメリカン、LGBTQのアーティストを見てます。

70年代フェミニズムのアートもまじ面白かったんだけど、先週はブラックアメリカンのアート&アイデンティティポリティクスについてのレポートをちょうど書いてました。

で、たまたま2日前くらいに今さらながらグラミー賞のケンドリック・ラマーのパフォーマンスをYouTubeで見て、個人的にタイムリーすぎたこともあり鳥肌たった。

 すごいわ。


アメリカの旗が約束しているものとその落差など。

アメリカの旗を題材としているブラックアーティストは、たとえば


差別用語と「氏ね」という文字が隠されているFaith RInggoldさんの「The flag for the Moon」(1969年)。


 おなじくFaithRinggoldさんの「The Flag is Bleeding」(1997年)。


David Hammonsさんの、実際の事件をベースにした「Injustice Case」(1970年)。

など。

公民権運動から半世紀以上たっても、解決されていない問題は山積みです。



ボノも登場してました。


そしてデイヴ・シャペールも一言コメントで登場!

「正直にモノをいうブラックマンをテレビで見るより恐いことはなんだか知ってるかい?
正直にモノをいうブラックマンでいることだよ」

Netflixのショウはまだ見てないんです!すんごいギャラで契約したそうですけど。
完全復活したのか。

この人ずっと前から思うんだけど松本人志に似てません?



このパフォーマンスはほんとにすごかった。多分わたし半分もちゃんと理解してないけどね。



仕事しながらは聴けないけど、ケンドリック・ラマーちゃん、こんどちゃんと正座して聴きます。

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/19

朝のうまうまポップアップ


寒ぅ。お天気だけど寒いっす。 
て、家から出ないわたくしが言うのもなんですけど。
今日は昼間でも2度Cくらいだったようです。

夕方、近くのスーパーまで歩いたら 、耳が凍りそうだった。

今日は三日月。ずっとお天気悪かったので、久しぶりに見る月。

きのうは予報どおり、少しだけ雪が降りました。ぜんぜん積もらなかったけど。


とある朝。Kちゃんが「ポップアップ」という小さなパンを焼いてくれました。

スコーンでもビスケットでもなく、「ポップアップ」。
はじめて知った。
レシピはたとえばこんなです。

材料は小麦粉と卵とバターと牛乳だけの、ごくシンプルなパンだけど、これがびっくりするほど軽くておいしい。
ブリオッシュくらいの大きさだけど、クロワッサンみたいな軽い食感。



この「ポップアップ」専用のちっこい焼型が、カリっと焼けるうまさの秘密らしい。
一番小さいマフィン型くらい小さくて、かなり深さがあるので、タネがにょーんと上に伸びてきて、このようにきのこ型に膨らむようです。

この焼型は、Kちゃんが近所のグッドウィルで発見した掘り出しもの。
しっかり厚手でしかもかわいい。ずっと探してたのが3ドルくらいで売ってたそうです。

Kちゃんも相当のグッドウィルハンターなのだった。


にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/18

王子様たちとあの髪型。


久しぶりの快晴でした。気持ちの良い一日。
15分しか外に出なかったけど、近所散歩を楽しみました。
もうプラム?やスノードロップの花が咲いてたり、水仙の芽が出てたり。
シアトルはもはや早春です。

でも明日は雪の予報。ほんとに降るのかしら。

しかし相変わらずバタバタです。

11月くらいからあんまりヒマがない気がするんだけど、そのわりに一向に大金持ちになっていないのはなぜなんでしょうか。
でも忙しい忙しいと思っているわりに、ログを調べてみると4時間しか働いてなかったりする。
もしかして自分では働いてると思っている間、宇宙人に誘拐されているか脳をのっとられているのかもしれません。

羽生くんのショートプログラムはライブで見逃したけど昨日の演技は観ました!

金銀めでたい!

前回のオリンピックも観たはずなのにまったく覚えてなかった。

「結弦くん見るの初めてかも」なんて思ったけどちゃんとソチ五輪も観てたよ、自分w
ほんとにこの記憶力の悪さには驚くべきものがある。



思わずYouTubeで4年前の見直しちゃった。そういえばこのお衣装にも見覚えが。

4年前はまだ少しあどけない感じだったけど、今回は貫禄ありましたね!

結弦くん、わかるー、おばちゃんたちが熱狂するのもわかるわー。おばちゃんたちだけじゃないかもしれないけどNBCで熱狂おばちゃんファンクラブの様子がフィーチャーされてましたよ。



なんかアニメに出てくる魔法使い的なキャラクターみたいだねえ。
かっこよかったー。
結弦くんは「ゆず」つながりで親近感がわくわ。うふ。

出てきただけですんごいオーラがあるの、あれってなんなんでしょうね。
AIがこのオーラを解析できるようになるまでにはまだ当分かかるだろうな。

銀メダルの「昌磨くん」も、ジャニーズっぽい感じのいまどきのボーイズですね。
髪型キレイにメッシュがはいってたなあ。自分でスタイリングするのかなあ。コーチかな。
でもどうしてあんなに胸もとはだけてるんだ。ホストか。でもかわいい。

うわー日本のフィギュアスケート界が進化しておる!と、浦島おばちゃんは感慨にふけった。

銅メダルのスペイン人も濃くてイケメンだった。
男子フィギュアスケートのひとはみんなキャラが濃いな。

いいものを見せていただきました。

そして解説のジョニー・ウィアーちゃんの髪型アンドファッション!
あちこちで『ハンガー・ゲーム』といわれているこの二人がこれからも楽しみすぎる。
ジョニーの解説はもっとキャピキャピなのかとおもったら意外に真面目で別人かと思ったw
女子フィギュアも誰が出てるかぜんぜん知らないけど見る!



ニューヨーク・タイムズの、タラちゃんとジョニーちゃんがお衣装を選んでるビデオがあってすごく見応えがありますwwww


ケバすぎる二人。ジョニーちゃん大好き。



にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/14

半魚人ラブ


『The Shape of Water』を観てきました。

おもしろかったー。
冒頭の水中シーンからむちゃくちゃ引き込まれます。

湿った色がキレイ。深いグリーンの映画。緑色がこれでもかと出てくる。

そして鮮やかな血の色。

ギレルモ・デル・トロ監督の映画は『パンズ・ラビリンス』しか観てない。
『パンズ・ラビリンス』はすごく印象に残ったけど、残虐場面がトラウマになった映画でもあった。 記憶からほとんど消去してしまったようであまり覚えていないのです。

この半魚人映画も、『パンズ・ラビリンス』ほどではないけど、暴力がしつこくねっとりと描かれてます。

1960年代のアメリカの暴力と性。 権力を持つ白人男性の。

そしてイノセントな被害者たち。ろうあ女性。黒人女性。猫と暮らす老人。そして人間でさえない半魚人という超マイノリティな地味なひとびと。
しかしかれらはイノセントななりに、生命力が強い。




半魚人映画ですけどPG13ではありません。
半魚人超うける。きもかわいい。
日本でこの半魚人は愛されるのでしょうか。




日本では3月公開ですね。邦題は『シェイプ・オブ・ウォーター』って、そのままだった。

女性のセクシャリティをこれだけ地味に当たり前に正面から描いた映画ってあんまりなかった気がする。そうでもない?

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/11

山の無料スノーシューツアー



タホマ山またの名をレーニア山の、スノーシューツアーに行ってきました。



パラダイスのビジターセンター。
数年前の1月に行ったときは、ゲートのところからかなり雪が積もっていてチェーンなしでは公園内に入れてもらえなかったのですが、今年は雪が少ないとみえて、パラダイスのビジターセンターまでチェーンなしでオッケーでした。とはいえところどころ凍ってはいるしうねうね山道なので、トラクションタイヤがマスト。

ハワイから乗ってるうちの子はちょっと年老いてきてあちこち心配なので、ジェニファーちゃんの4WDにのせてってもらいました。

ビジターセンター付近の積雪は12フィート(360センチ)くらいだそうです。


週末は1日2回、パークレンジャーが引率してくれる無料のスノーシューツアーがあります。スノーシューも無料で貸してくれますよー。(ポールの貸出しはなし。)

 左側のラケットみたいなのは、旧式のスノーシューなのだそうだ。



このラケットみたいなやつもちょっと魅力的ですね。


しかし、ツアー参加者はみな、新型スノーシューを利用。

2時間のツアーは、ところどころで5回くらい止まりながら、地形や氷河について、冬山のいきものたちについて、積雪量について、それに温暖化の影響で積雪が減り降雨量が多くなっていること、そうすると将来は農業に多大な影響がでると思われていることなどまで、レンジャーさんの充実したレクチャーつきでした。



あいにく霧がかかっていて山は見えませんでしたが、それはそれで趣きのある雪山歩きが楽しめました。


しばらく新雪が降ってないらしく、みためはふかふかだけど実はコチコチで、けっこう凍ってるところもあった。


スノーシュー歩きは初めてですが、楽ちんで楽しかった!


スキーとはまた違う楽しみがありますね。
しかし、レンジャーさんによると、つい数日前にも、小川の上に積もっている雪だまりを踏み抜いて首まで水に浸かってしまったハイカーさんがいたそうです。その人は幸い流されることなく自力で脱出できたそうですが、雪の下に流されちゃうと春までそのまま発見されないこともあるそうな。
なので、マーキングのあるトレイルを外れないでね!と念をおしてました。



パラダイスの標高は1645メートル。もうちょっと寒いかと思ったけど、歩いているとぜんぜん寒さを感じないくらいでした。氷点下すれすれくらいかな。



針葉樹には小さなツララがついていたり、一部だけ樹氷になっていたり。
うさぎやもっと小さな動物のあしあともところどころにありました。


パラダイスでは橇すべりをしてる小さい子もいて超楽しそうだった。
うちの息子もお尻で滑ってました。


ハイキングの間はレーニア山の姿はまるで見えなかったけど、帰り道で、夕日を浴びて神々しい黄金色の姿を見せてくれました。

にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ

2018/02/08

さまよう猫のタマシイ



やっと、長いトンネルを抜けて放心状態。いやいや、またドラマクイーンなんですけどね。
先週までの2週間は翻訳稼業をやってきた中でも一番ハードだった。もちろんスーパーボウルも見れず。

そんななか半分寝ながら書いたデジタルクリエイターズの回です。

自分ではけっこう気に入ってたんだけど、70歳の柴田編集長には完全スルーされ、しかも知らないうちにタイトルが「さまよう猫のタマシイ」から「猫シッターで考えたワンダーラスト」とかに変わってた。あら。

ちょっとヤバイ人と思われてしまったのか、よほどつまらなかったのか。まあいいや。まあヤバイ系の人ではあるかもしれませんけどね。

でもそのかわり、「猫を2ダース飼っている」という方からメールをいただきました。

では以下、「さまよう猫タマシイまたはワンダーラストについての考察」です。




年に何度か、猫シッターに行く。

知人のご夫婦が日本にセカンドハウスをもっていて、年に1度か2度長期間日本に滞在する。そしてシアトル近郊のひろびろした邸宅に4匹の猫たちが残されるので、その皆さんのお世話をするのがわたしの任務である。



2匹はメンズ。繊細で好き嫌いが激しいお公家さん的な性格のリンタロウ君と、耳が聞こえないためかまったく空気が読めないシンノスケ君である。この子たちはもう10年以上この邸宅でのびのび暮らしている。



そこに去年加わったのが、2匹のガールズ。ふたごの(ほんとは多分五つ子か六つ子だったのだろうけど)ハナちゃんとノラちゃんで、まだ1歳未満のぴちぴちギャルズだ。

この4名の間に繰り広げられる猫ドラマは、かなりのエンターテイメントだった。
特にふたごギャルのハナちゃんとノラちゃんのキャラクターの違いには瞠目すべきものがあった。



今回は、その猫ドラマの一端をご紹介したいとおもう。

まずハナちゃん。この子は、満腹中枢がどうかしてるのかねと思うくらい、よく食べる。

ほかの子たちは、缶のフードをめいめいのお皿に少しずつあげても、ほんのちょっと食べるとどこかに行ってしまう。彼らが集中して食べている時間はほんの1分足らず。そしてしばらくするとまた戻ってきて思い思いの時間にちびちびと食べる。
リンちゃんなんかは、ほんのちょっと上澄みをなめただけでぷいっと中庭のドアのほうへ向かい、「まろは散歩に行くでおじゃる」と外遊を要求する。そして、しばらくして戻ってきてからまたフレッシュな気持ちで残りを食べるのがルーティンである。

でもハナちゃんだけは、完璧な集中力を発揮して目の前のごはんに取り組み、ほぼ完食するまで食べ続けるのだ。ハナちゃんの注意がごはんからそれるのは、自分が食べ始めた後で他の猫がごはんをもらっている時だけだ。

みんなが自分とまったく同じものを食べているのにもかかわらず、この娘は人の皿めがけて突進し、頭をにょっと横から割り込ませて食べ始めようとする。

この攻撃を受けると他の3名はすごすごと退散してしまう。特に王子様のように繊細なリンちゃんは、ハナちゃんが近くに寄って来ただけで食べる気を喪失するらしく、即退場する。そのまま放っておくとハナちゃんは他人の皿に盛られたごはんを余すところなく順番に食べ尽し、最後に自分のお皿に戻って、これもまたきれいに食べる。まるで『千と千尋の神隠し』に出てくる「カオナシ」を見ているかのような、圧倒されるような食べっぷりである。



もちろんそれには結果が伴い、持ち上げてみるとまだ8カ月という小さい身体に見合わないずっしりとした重量感がある。そのままでは異常に巨大化してしまうのが目にみえているため、食事時間にはハナちゃんが他人のごはんの近くをうろつかないよう隔離しておく方策を取らねばならない。

ごはんのみならず、ハナちゃんは何に対しても躊躇がない。猫たちはみんなヒモの先に羽根のついたおもちゃが大好きで、これをリビングの真ん中でブンブン振っていると皆がたちまちそわそわしはじめるのだが、真っ先に飛び出してくるのはやっぱりハナちゃんである。

ギャルズがあまりにパワフルにリビング中で破壊活動を繰り広げるためヒトが眠れないこともあるので、夜の間二人だけを別の部屋に隔離しておくこともある。朝迎えに行くとドアのところで待っていて飛び出してくるのはハナちゃんで、姉のノラちゃんは必ず数メートル遅れて、妹の後を追う。


リビングにはプラスチック製のおやつディスペンサーがある。40センチくらいの高さで、3階建ての丸い立体駐車場みたいな形になっていて、ヒトがてっぺんの穴からカリカリおやつを入れると、まわりにいくつも開いた穴から猫が手をつっこんでそれぞれのレベルの床の穴に次々におやつを落としていき、最後に一番下からおやつが外に出てきて食べられるという仕掛けになっている。

このディスペンサーに入ったおやつが食べられるのはハナちゃんだけである。
というか、敢えて挑戦するのがハナちゃんだけなのだ。
おやつを取り出すと皆わらわらと寄ってくるのだけど、ディスペンサーに入れたものにはハナちゃん以外見向きもしない。ハナちゃんも、まず床にあるおやつをしっかり食べてから、ディスペンサーに向かう。

で、このディスペンサーは一見パズル的な、ちょっとした知力を要求するもののように見えるのだが、そうではない。必要なのは、食えるまであきらめないという強い意思だけなのだ。ハナちゃんはとにかく怒涛の勢いであらゆる場所から手を突っ込み、やみくもにかき回している。すると、そのうちおやつが下から出てくる。彼女にとってこれは、上段>中段>最下段という段階のあるパズルではなくて、「ひとかたまりの障害物」にすぎないようだ。

常に忖度も斟酌も躊躇もなく目の前のものを全力で追い求めるハナちゃんは、まるでシリコンバレーのスタートアップ企業の人か、投資ファンドのマネージャーのようである。

資本主義社会で勝ち残っていくにはこういう何をも顧みないドライブが必要なのかもしれないなあ、と思わされる。

ハナちゃんが人間だったら、きっと中学生の時からビットコインで5億円くらい儲けてると思う。



ノラちゃんにはドライブがないかというと、決してそんなことはない。

でも、そのドライブは明らかにハナちゃんとはタイプが違う。

何が違うかというと、ノラちゃんには、いってみれば想像力みたいなものがあるのだ。

そしてこの娘には「ワンダーラスト」がある。



猫は好奇心が強いといわれるけど、ノラちゃんの好奇心は筋金入りだ。

キッチンで料理をしていて、キャビネットの扉をほんのちょっとでもあけっぱなしにしておくと、閉めるときにはたいてい猫がはさまっている。

これは必ずノラちゃんである。

彼女は、普段は閉まっている扉がたまに開く時を決して見逃さない。


キッチンのごみ箱は引き出し式になっている。そのごみ箱の入っている引き出しの下に手をつっこんで空ける方法を知っているのはノラちゃんだけ。

そもそもごみ箱の後ろに入り込んで探検しようとするのもノラちゃんだけだ。


大きなシダの鉢植えの中に飛び込んでいってしまうのもノラちゃんだし、スパイス棚の下にいつのまにか挟まっているのもノラちゃん。

ディスペンサーのおやつには興味を示さないのに、カウンターの上に置いてあるおやつの入った箱をかじったり床に落とたりして、なんとかフタをあけて食べようとするのも、ノラちゃんだけ。

あれだけ食べることに貪欲なハナちゃんは、そういう斬新な試みを思いつくことはない。しかしノラちゃんがカウンターから落下させてフタを開けることに成功したあかつきには真っ先に走ってきて中身を一緒に食べている。

そしてノラちゃんは、外の世界に激しいあこがれをもっている。


この家の周りは自然環境が豊かでコヨーテやアライグマもいっぱいいるし、何にでも無鉄砲に突撃していくノラちゃんは気の毒ではあるけど、とてもじゃないが心配で外には出せない。




わたしがリビングに座って仕事をしていると、時々世にも哀しげな声でノラちゃんが啼いているのが聞こえる。世界のすべてが自分を置き去りにして別の次元に旅立ってしまうのを目の当たりにしているかのような、悲痛な声である。自分はガラス窓のむこうの世界にどうしても行かなくてはいけないのだと切実に感じているのがわかる。

この悲しいほどのあこがれは、きっと人間の中に呼び起こされるものと基本的には同じ作用なんだろうなと思う。ただ言語化されていないだけで。

ハナちゃんとノラちゃんには明らかな指向性の違いがある。
すごくよく似た遺伝子を持って、ほとんど同じ条件で育っているはずの姉妹なのに。

見たことのないものに死ぬほどあこがれて全力で追い求める人と、目の前に置かれたものにすべてのエネルギーを注ぐ人。


人類には旅に出たがる個体と安定を求める個体があって、全体として種の存続に役立ってるという話を聞いたことがある。その状態にい続けるのが好きな保守的なグループと見知らぬ土地に旅立っちゃうグループがいるから、新天地に突撃していって全滅する人びとも多いなかで何割かは生き残り、種は全体としてより広い土地に広まっていったのだ、という説だったと思う。

遠くのものをあこがれてやまない気持ちを「ワンダーラスト」という。ドイツ語が語源だそうで、「WANDER」(漂泊する、ふらふらする)ことへの「LUST」(渇望)。病的なまでに強く、遠くに行きたくなっちゃう気持ちである。
こういう傾向を持っている人は、つまりホモサピエンス中の突撃隊だってことなんだろう。

わりに最近の研究で、ある遺伝子がこのワンダーラストに関連しているのがほぼ確実だというのが実証できたという話を聞いた。人類の20%は特定の遺伝子「DRD4-7r」を持っていて、どうやらその人たちはワンダーラストが強いという説だ。


これはドーパミン受容体の感度を決定する遺伝子で、これを持っている人はほかのグループに比べてリスクを取るのが好きで新しい刺激を求める傾向があるので、旅好きなだけでなくアル中やヤク中にもなりやすく、精神疾患にかかる傾向も強いらしいという。
(『Telegraph』紙の記事はこちら)



この遺伝子「だけ」がそういった特性を決めると結論するのはちょっと単純すぎるんじゃないですかと思うけど、わたしたちの志向や嗜好はその多くが生まれつき埋め込まれたものだっていうのは、まあそうなんだろうなと思う。

人間の生活にはほんとうに沢山チョイスがあるから、成長していく間にミュートになるものや活発になるものもあるんだろう。殺人鬼になりやすい遺伝子構造、お坊さんになりやすい遺伝子構造、会計士になりやすい遺伝子構造というのもあるのかもしれず、でもそれにたいする適切な環境のはたらきかけがなければ殺人鬼もお坊さんも会計士もできあがらないという、そういうことなんじゃないかと思う。

まだ誰にもわからないすごく複雑なしくみによって、わたしたちはいろんなものを、人や場所や香りや味や音や感触や、さらには思想や信条も、致命的に好きになるように運命づけられている。

個性というのは、究極的には「自分は何が好きか」っていうことなんじゃないかと思う。何ができるか、よりも、きっと何が好きかのほうが大きい。
その志向のほとんどが遺伝子で決定されているにしても、わたしたちは「好き」に引きずられて喜びを感じ、湧き上がる願いを切実に生きずにはいられない。

ノラちゃんの切ない啼き声は、紛れもなく「ワンダーラスト」の表明だとおもう。
はてしなく大きな空間、遠くで飛んだり動いたりする不思議なもの、見たことのない色や形や感触。窓の外に見えるものや、ごみ箱のウラにあるかもしれないなにものか(なにもないけど)に、ノラちゃんのタマシイが引き寄せられているのだ。

人間の2割にさまよい系の人がいるなら、猫にもさまよい系がいないほうが不思議だ。

もしかしたらもっと単純な生きもの、爬虫類とか昆虫の中にも、安定を志向する個体と遠くへ行きたがる個体が同じくらいの割合で存在してるのかもしれない。

「タマシイ」がアミノ酸の雲のどこかにしまわれているのなら、タマシイ構造が単純なものから複雑なものまで、生命体の間で共通しているのは当たり前な気がする、と最近よく思う。「何がしたいか」「何が好きか」だ。

これは仏教的な考え方につながっていくのだと思う。もっと言うなら、きっと植物にだってそういう指向のスイッチはあり、感受性のモトがあると思う。

ショウジョウバエもドーパミンを持っているということを忘れてはいけない。わたしたちの知っている嬉しさや恐怖のエッセンスのコアである原始的ななにかを、ハエたちも知っているのだ。ましてや猫たちは。

言葉の檻、主観の檻、ロジックの檻に閉じ込められていない猫や犬たちは、人間のタマシイの真ん中にあるものを、そのまんまのかたちでみせてくれる。だから犬や猫といるのがこんなに面白いのだ。

言語獲得以前のワンダーラストを、ノラちゃんがかいま見せてくれる。




にほんブログ村 海外生活ブログ シアトル・ポートランド情報へ