2017/08/09

シアトルのアールデコたてもの(1)エジプト墳墓仕様のシアトル・タワー 


シアトル情報誌Soy Sourceに掲載していただいている「シアトルたてもの物語」で、5回連続でアールデコのビルを取り上げたのですが、こちらに写真をアップしてなかったので、まとめて紹介します。

Seattle Architecture Foundation(シアトル建築協会)が開催しているツアー「Diamonds & Gold: The Art Deco Skyscraper Northwest Style(ダイアモンド&ゴールド:ノースウェストのアールデコ高層建築)」で巡るビルのうち、ソイソースの記事では主だった5つを紹介しました。

このツアーに参加したのは1月。雨模様の朝で、すんごく寒かった。
2時間強のツアーだったんですが、最後のほうはもうかなり辛かったです。

ダウンタウンのたてものツアー、参加するなら夏の間がベストシーズンですよ〜!

 アールデコシリーズ1回目の記事で取り上げたのは、「Seattle Tower (シアトル・タワー)」。この上の写真の真ん中の、上が階段状になっている(ジッグラトというそうです)ビル。

住所は1218 Third Avenue。



この風景は、ツアーで最初に行く場所、レーニア・スクエアの2階から見たもの(現在レーニア・スクエアの近辺は工事が始まっているので、ここはもうツアーには組み込まれていないかもしれません)。

アールデコ様式のシアトル・タワーを囲んで、右にそれよりちょっと前のボザール様式のCobb Building(コッブ・ビルディング)、 左に1970年代のインターナショナル様式の箱型ビル、後ろには1980年代後半のポストモダン様式のタワーが並んでて、デザイン見本市のようです。

「この景色を見ると『ダウントン・アビー』を思い出すんですよ」
と、この日のツアーのボランティアガイドをしてくれたナンシーさんが言ってました。
レディ・メアリーとバイオレットお祖母様が並んでいるみたいな感じだと。なるほど。


アールデコの特徴をおさらいしました。

時代背景は、19世紀末から急激な技術革新が次々に普及し、ビルの高さもどんどん高くなっていき、アルミやプラスチックなどの新しい建材も出てきた頃。

ヨーロッパの列強が第一次大戦で疲弊しているのを横目に、アメリカが新興成金の文化後進国から世界のリーダーの地位を目指して邁進していた時代です。

アールデコはもともと1925年のパリ万国博覧会で注目された新しいデザインのトレンドだったのだけど、実はこの様式に「アールデコ」という名前がついたのは1966年になってからなのだそうだ。
へー。Hilary Gelsonという批評家が使ったのが最初で、それ以降、1925年から39年頃の様式をそう呼ぶようになったのだとか。

特徴としては、古代文明に取材した装飾と、現代性を強調するデザインが同居していること。
わかりやすいビルの意匠の特徴は
1)垂直のラインを強調している
2)セットバックがある(階段状の「ジッグラト」)
3) 装飾がたくさんある
こと。

その土地の植物などを装飾に取り入れるのも特徴のひとつで、シアトル・タワーのてっぺんにも、3本のシダーウッドをかたどったフラッグポールがあります。



こちらがシアトル・タワーの横の入り口。

寒そうでしょ。寒かったよ。冬に参加するならダウンジャケットとブーツは必須です。

ガイドのナンシーさん、まだ50代そこそこに見えるけど、「以前は弁護士だった」といってらっしゃいました。もう引退したらしい。弁護士稼業より「こっちの(ガイド)ほうがずっと楽しいわ♡」と言ってました。


外壁はテラコッタ。
27色のテラコッタを使って、上にいくほど薄い色にして、雪山を思わせるデザインに仕立てていたそうです。


アールデコのデザインが古代文明からヒントを得ていたっていうのは、このツアーに参加して初めて知りました。

ジッグラトというのも本来はメソポタミアの建築物の名前だけれど、マヤ文明のピラミッドの構造もこの名で呼ばれていて、アールデコがヒントにしているジッグラトはどちらかというとマヤ文明のピラミッドの方みたいです。

そして1922年に発見されたツタンカーメン王の墓のおかげで、1920年代は空前のエジプトブームだったのらしい。

で、アールデコにもエジプト美術の影響が濃厚だったのでした。
そういわれてみれば、このビルの名前のパネルの額縁、典型的なアールデコ様式だけど、たしかにエジプトだ。


これまでのギリシャ・ローマ〜ルネサンスを究極のお手本とする古典様式ではなく、いままでなかったもの、目新しいもの、これまでの西洋文明の系譜にはまったくなかったものを、新時代の象徴として貪欲に取り入れた形式、といえるのだと思います。

というわけで、1928年に建設されたシアトル・タワーの1階ロビーは、ツタンカーメンの墓をそのまま再現しようとしたかのようなエヅプト仕様。


建築家はこのエレベーターホールを墳墓みたいにしたいと構想していたらしく、横の入り口は、ピラミッドの横穴から潜り込むみたいな印象を狙っているそうです。
たしかにそういわれてみると、墓っぽい。

天井もピカピカ。床は何種類もの大理石でモザイクになってます。


そして一番奥の壁には、時計のまわりに世界地図のレリーフが。
「Westward the course of empire takes its way」
(帝国は西に進路をとる)
という勇ましい一文つき。

このレリーフ、微妙っていうかあんまり上手じゃないっていうか、はっきりいってヘタウマのレベルだと思う。しかもアメリカの北西岸のとこにはこのシアトル・タワーが堂々と彫られてます。かなり痛いレリーフ。しかも墳墓の中に。


大恐慌前夜の、まさに狂騒の20年代。怖いものなしのアメリカの、西のはての都市の、ビッグな夢がそのままレリーフになっちゃったって感じです。
しかしこの夢を描いた会社も今はありません。


このビルはもともとノーザンライフという保険会社の自社ビルで、ノーザンライフ・タワーという名前だったんだけど、昔は何色ものライトでライトアップされて、まるでオーロラのように輝いていたので「ノーザンライツ・ビル」と呼ばれてたそうです。

スミスタワーよりはずっと低い27階建てだったにもかかわらず、丘の上にあったので、その当時のシアトルでは一番高くそびえて見えたのだそうです。

「シアトル・タワー」って、街をしょってたつような名前がついているのも、伊達ではないのです。一時期はほんとうにシアトルを代表するビルだったんですね。

夜、港に入ってくる船から見たこのタワーは、綺麗だったことでしょう。

こちらのサイトで、建築中の写真などが見られます。

今では完全に高層ビルの間に埋もれちゃって、「どれ?」って感じですけど、じっくり見るといろいろ見ごたえ充分な、正統派アールデコの優雅なビルです。


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2017/08/08

シアトルに韓国系のあの店ができていた!


U-Districtに、Hマートが開店してました!
(て、私は知らなかったんだけど、6月の卒業式前後にオープンしてたらしいです。)

キムチの品揃えがずば抜けて幅広く、肉や野菜もお安い韓国系スーパーです。

以前はシアトルから車で30〜40分くらいの郊外にしかお店がなく、一昨年ベルビューに開店したのですが、ついにシアトル市内に進出。



…とはいっても、この店はコンビニサイズ。
典型的なローソンとかファミマの大きさです。お肉売り場はこれだけー。


野菜もこれだけー。
でもさすがに学生街だけあって、半分サイズの白菜が売ってる。大根も小さめ。
んーでも、きのこのセレクションが少ないのは残念。 エリンギはあったけどしめじがない!


しかし、コンビニサイズの店舗なのにもかかわらず、味噌と醤油のこの品揃えはどうだ!


ババーン!日・中・韓、そして台湾の醤油がすべて揃っています。
醤油・みりん・酒でこの棚は埋め尽くされ、そして反対側はというと…


ごま油と韓国味噌(テンヂャンていうの?)がババーンバーンと並ぶのです。
(ジャパニーズ味噌は、冷蔵の棚に別途並んでます)。

この立地で(ワシントン大学のすぐそば)この狭さで、この調味料の充実ぶりはどうなん?と、他人事ながら突っ込みを入れたくなりますが、Hマートといえばテンジャンと醤油!とこのコーナーを目指して来る人向けなのかもしれません。

でも数ヶ月後にお菓子とカップラーメンの棚に変わっていても驚きませんが。

私の前にレジに並んでた学生風のお兄さんは、オートバイ用のフルフェイスヘルメットをかぶったまま(これ日本じゃNGですよね)、半分の白菜と牛肉を2パック買って、袋はいらないぜ、と肉パックをわしづかみにして去って行きました。今日はお鍋かな?


こんな「スパイシースープ」セットも売ってた。
韓国・中国からの留学生がものすごく多い昨今、このロケーションは当たりなのかも。

2階には化粧品と日用品。

そして、来年にはダウンタウンのPine Streetと2ndの角にもフルサイズの店が開店するそうです。前にRACKのあったとこ。パーキングはあるのかな。楽しみに待ちましょう。

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2017/08/07

シアトルのアート・フェア


シアトル・アート・フェアに行ってきました。

この間シアトル美術館でコレクションの展覧会があったポール・アレンさんが創設したんだそうです。

場所はシアトル・シーホークスの本拠地センチュリーリンク・フィールドの隣。
この辺ほんとに行くたびにキレイになっている。新しいオイスター・バーとかオシャレなカフェとか雑貨店とかがたくさんできてました。



センチュリーリンク・フィールドの向かいにあるこのビルも、ただいま建築中。既存の古い、もう何十年も使われてなかったっぽいビルに新しく7階分をつけたす工事。

この路面もこじゃれたカフェかビストロかなんかになるんでしょうね。


ニューヨークなど東海岸のギャラリーもいくつも出展してて、盛況でした。

この茶色い箱は、センターピースのひとつ。
Mary Ann Peters さんの 『the world is a garden, the walls are the state』。


アラミド繊維の網のスクリーンでできた箱の中に、クレイとアクリルの花が入っていて、網をとおして角度によって中の花が透けてみえる、幻想的な箱。


草間彌生さんの作品もいくつもあった。


John McCrackenさんの「黄色い板」。1968年のミニマリスト作品。
こちらも草間さんの作品と同様、ニューヨークの超有名ギャラリーの出展でした。

これは飾る場所を選びますねー。散らかった部屋にあったら単なる作りかけのIKEAの棚板だ。

こちらはお値段出てなかったけど、この板は20万ドルくらいでしょうか。


こちらはFay Jonesさんのドローイング。好き♡ 売約済みの赤い丸が貼ってありました。
28,000ドルなり。

若いアーティストの数千ドルの作品から、世界的に有名な人の美術館クラスの作品まで、けっこう売れゆきよさそうだった。

最近シアトルに引っ越してきて、お家やコンドミニアムを買って、さてリビングに飾るアートでも買おうか、なんて感じの若いカップルも(勝手にシナリオ作ってますけど)多い感じ。


これはTracey Snellingさんの作品で、ロサンゼルスあたりにありそうなモーテルの部屋やアダルトショップ、マッサージショップなどを再現したミニチュアハウス。
写真撮ってる人が多かった。



Wolf Kahnさんの納屋。すごくキレイな色。
このギャラリーはサウスカロライナ州から参加で、アンドリュー・ワイエスや父ワイエスの作品も出展してました。


銀行や不動産屋さんのお得意様用エクスクルーシブ・ラウンジがあり、シャンパングラスを片手に鑑賞している人が多い。
美術館とは違う、「屋台」的な感じが面白かった。


この人すごく好き。Sarah McRae Mortonさんという、ペンシルバニア出身のまだ30代の画家さんで、歴史的モチーフを使った幻想的なストーリーテリングと、抑えた色に勢いのある筆使い、鮮やかなイメージ。クリス・ヴァン・オールズバーグの絵本に出てきそうな感じの場面。


シアトルのFoster White Gallery で取扱い中です。お値段は5,000ドル〜20,000ドルくらい。ダイニングの壁にいかが? 


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2017/08/06

最近のトレーダージョーズさん。ししとうルーレットと緑茶の進化


ちょっと行かないと新しいものが増えたり減ったりしているトレーダージョーズさん。

先日の発見は、「Matcha Green Tea」と「SHISHITO PEPPERS」。
どちらも「馬から落ちて落馬」的なネーミングなんですけど、まあそこはおいといて(「抹茶グリーンティー」って、ねぇ…)。

ししとうペッパーズはHマートとかにもあるんだけど、この袋のデザインが可愛すぎて即買い。昔からジャケ買い表紙買いが多かったです。。


一袋まるごと、しょうゆと砂糖で甘辛煮にしました。ししとうペッパーズ(しつこい)は中にとびきり辛いのが素知らぬ顔をして紛れこんでいるのが特徴ですね。
 
この袋には大当たりが一個だけ入ってました。うちの息子は辛いのが好きなので「当たらないかなー」とわくわくしながら食べていたのに、当たらず。

わたしがたまたま食べた、ちっちゃいのが、よりによって大当たり。
ひょぇぇーとなって冷蔵庫に水をとりに走ったほど辛かったです。

ししとうルーレットには当たらないでいいからメガミリオンとかそういうものに当たりたい。


マッチャグリーンティーのほうは、中身の色はご覧のとおり皇居のお濠の水のような色ですが、まっとうな苦味のあるグリーンティーでした。

最近ほんとにマッチャはやってますね米国で。
しかしさて、この正統派抹茶グリーンティーがどこまでアメリカ人に受けるか。
「オーマイガッ、トゥービター!」と言われているかもしれませんね。

245mlで99セントでした。
冷たいお茶が手軽に飲みたいときにいいかも。これはリピートです。
どこの会社が作ってるのかなー。

ところで昨日ウワジマヤで買ったこっちは、ダメダメグリーンティー。


ポッカだったし、セールで89セント。うわーいと思って買って飲んだら、あまっ
お砂糖17グラムも入ってた。しかもジャスミンティー。

伊藤園の「おーいお茶」の隣に並んでたから、加糖って思わないじゃない、普通。

まずくはないんだけど、これは「ARIZONA TEA」のカテゴリーです。ポッカさんもっとジャンルを分かりやすくしてください。

最近、伊藤園さんの奮闘のおかげか、普通のアメリカのスーパーでも無糖のお茶を見るようになってきて嬉しい限りなんだけど、やっぱり気は抜けませんなー。

もう15年位前だけど、ホノルルで仕事をしていた時、ワシントンDCから来た偉い人(50代白人男性)との会議に隣のABCストア(なつかしい…)で日本から空輸されたペットボトルのお茶(伊右衛門かなにか、よく覚えてません)を調達してお出ししたら、その方が「なんておいしいお茶なんだ!」と感激してた。

当時はまだ無糖のお茶のペットボトル入りというのは、アメリカ国内では前代未聞だったんですね。

砂糖が小さじ10杯くらい入ったソーダや甘いお茶か、くそまずい(個人の意見です)「ダイエット」飲料か、水しかないという不毛の地だったのが、トレジョのOEMで苦いマッチャグリーンティーが売り出されるまでに進化しました。アメリカも文化的になったものです。


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2017/08/05

緑の庭をさまようタマシイ Wandering & Wondering  


木曜日、ファースト・サーズデーのイベントで、シアトル日本庭園で行われた『Wandering & Wondering』に行ってきました。
 
毎年恒例のイベント。以前に行ったのはいつだったろう、と思ったら、うわぉ、2011年だった!6年前っ。
今回は舞踏家の薫さんは、日本へご出張のためおやすみ。

Joan Laageさん率いるKogut Butoh団が、庭園の中にさまよい出します。


古代ふうの装束が、庭園の風景に溶け込んで、神話の風景のようでした。


『日本書紀』の風景みたいでしょ。シアトルですよ。


音楽はシンセサイザーと声を使った即興でした。
集団でよろよろと出てきた舞踏家たちは、それぞれ思い思いの持ち場へ散ります。


池の上の平石に陣取るJoanさん。
なんだか室町時代あたりのひょうきんな踊り手のようでもありますね。
煙霧なので背景がすこしセピアがかっています。


舞踏家は、言葉にすることの難しい感覚をたぐり寄せ、ふだんの人間とは少し別のものに変わっていきます。


鯉がすごく良い感じの水のなかから出てきました。
ここの水もちょっと煙霧な色ですね。


水に映る影が、別のタマシイのようです。


池にかかる中橋も、Joanさんが立つと能舞台のよう。
後ろの松がまるで屏風みたいな小道具に。


池の真ん中でいったん集合した踊り手たちは、またそれぞれの場所へゆるゆると散ります。スケッチなどをしていた人びとは突然の来訪者に仰天。


木霊とかそういう感じのものになっている舞踏家。


日本の山にいる女神様はこんな感じなのかも。


ゆったりと夏の夕方をくつろいで過ごす人びとの傍らに、神さびた姿。


藤棚の下にも、ゆらゆらするタマシイが。


柳と語り合う舞踏家。


つかの間異世界になったジャパニーズガーデン。踊り手も見る人びとも楽しそうだった。

木曜は最高気温35度超えの予報も出ていたので猛暑?と思ったらそうでもなくて、穏やかな風が吹く、過ごしやすい夕方でした。


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